源泉徴収と給与課税について

確定申告の時期ですが、ネットを見ていたら気になる記事を見付けました。
深田えいみ「追徴課税8000万円」前事務所の裏切り苦境を支える「金髪イケメン医師」との質素愛』(Yahoo!ニュースより)

内容は、セクシー女優の深田えいみさんに前事務所時代の7年間分について税金の申告漏れがあったというものです。記事によると、経緯は下記の通り。
・給料制で月給約200万円だった(年収約2,400万円)
・事務所が「税金はちゃんと処理しているから」と言っていたものの実際はしていなかった
・申告していなかった7年間分の1億5,000万円ほどについて追徴課税を受ける(8,000万円)

結論から言うと、おそらく給与として深田さんに支払われていたのではなく、個人事業主の深田さんに支払われていたのではないかと思います。

記事の記載の通り、お給料として頂いていたのであれば、雇用者である事務所が源泉徴収義務者となり少なくとも源泉徴収分は事務所に支払い義務が生じます。源泉徴収税額を概算すると下記の通りです。
①社会保険料等控除後の給与等の金額:187万円(200万円-社保12.9万円(*1)ほど)
 *1:年間の社保合計154.8万円(71.4万円+83.4万円)
②源泉徴収税額:444,016円(=374,180円(*2)+69,836円(*3))×12=5,328,196円
 *2*3:国税庁HPの給与月額表より
月額表というのは、月収から年間の給与収入を推定して「このくらいの割合で先に源泉徴収しておこう」というものです。

一方、給与所得者の場合は基本的には確定申告が免除され、雇用者側で年末調整義務がありますが、年収が2,000万円超の深田さんは例外的に確定申告義務があります。
給与所得者であると仮定した場合の確定申告額を概算してみましょう。
①社会保険料等控除後の給与等の金額2,400万円-154.8万円≒2,245万円
②その他の控除額:給与所得控除195万円、基礎控除48万円
③①-②=2,002万円
所得2,002万円を所得税の速算表に当てはめると、
2,002万円×40%-2,79,6000円=5,212,000円
となり、先に月額表で求めた源泉徴収税額12か月分とほぼ同額になります。

このため、深田さんには所得税の追加納付はほぼ生じないこととなります。会社側の懈怠により住民税が天引きされない普通納付だった可能性もありますが、住民税額通知を7年間も見ないというのは考えにくいです。

いずれにせよ、芸能界等では雇用形態が給与のケースと演者さんを事業主として支払うケースのどちらもありそうですから、収入が発生するときはそれがどのような契約、形態に基づくものであるかをよく確かめる必要があります。